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2012年1月28日 (土)

ダメだったよー

残念ながら、賞にはとどきませんでした。
少年少女向けグランプリは『Zombillénium 』でしたよ。
まあなんとなく、自分でも「この人だろうなー」と思ってたので仕方無いかな。
作者のArthur De Pins さんは、大変可愛らしい絵をかかれる、
ここ数年こちらで大人気の作家さんで、Zombilléniumもすでに二巻目。
こちらでおそらく一番メジャーな漫画雑誌『Spirou』で連載もされている人気作品なのです。
さすがにぽっと出のBD作家が初めて出した本じゃ分がわるかったなあ。

とまあ、賞自体は残念ではあったけど、それ以上にすげえ経験をいっぱいしてきましたよ。
本当にでかい祭りで、ちょっと日本には比べるものがないクラス。
強引にいうなら、東京ゲームショウの企業ブースが町中の至る所に作られていて、
出版社だけでなく、本屋さんから古本屋さん、こっち独特の商売である原画屋さん(有名作家さんの原画を売るお店)なんかがスタンドを作ってあちこちで様々なイベントもなされているのです。さらには国でもってブースを借り上げ、自国のBDや漫画文化を紹介する催しもされてました。一応時間が空いた時にスペインのと台湾のブースに行ってみましたが、
やはり国によってイメージが違って楽しかったです。
なんというか、ヨーロッパ中のBDや漫画に関する全ての業界が一度に集まった感じでした。

そうなるともちろん、大げさではなくヨーロッパ中から作家さんもファンも押し寄せます。
初日の晩に編集さんたちといったバーではマジでむこうから英語、あっちからスペイン語、
となりからなんかまったく聞き取れない言語、ふと気づいたら下に落ちていたパンフレットがドイツ語、私らの席ではもちろんフランス語。そんなカオス状態。

私自体は二日目、『CrimeSchool』の出版社、DARGAUD社のスタンドでまず新聞のインタビュー。
昔スピルーの漫画版をかいた時にフランスによばれて受けたインタビューも数多くありましたが、
それはそもそもスピルー自体がこっちではタンタンと人気を二分するくらいの超人気作だったから、自分の手柄ではなくスピルーのおかげで受けれたインタビュー。今回は自分たちだけのオリジナル作品ではじめて新聞社からインタビューを受けたわけです。それだけでも嬉しさひとしおです。
その後そのままそのスタンドでサイン会。こっちのサイン会では、漫画家は毎回きっちり絵を描くのが普通です。書き飛ばしたりせずに丁寧に。人によっては色まで塗ったり。
なので一度のサイン会だと私の場合、10人そこそこくらいが普通だったんですが、
いきなりそこで25人くらい?それ以上?のサインを。
へとへとになった後、ぼーっとしてると実は最初に言った少年少女向けグランプリの発表が今日であると聞かされます。しかも小一時間後だとか。
どうやら「少年少女向けグランプリ」が前夜祭の目玉で、本祭の目玉が「本グランプリ」って
事らしいです。

へとへとなまま急に緊張しだして、わけのわからないテンションで会場入り。
そこでは他に新人賞、学生大賞みたいなものもやっていて、その審査員が普段通っている
アトリエの仕事場仲間。普段は下ネタ大声で話したり、突然歌いだしたり、コーラ飲んだ後盛大にげっぷしたりする連中なのに、「すげーな、ホントにこの人達有名人なんだな」と改めて確認(笑。

で、まあ賞自体は最初に言った通り。「ああーだめだったかー」って気分でがっかりしながら
とぼとぼと、夕飯のためにディナーパーティの会場へ。ここでなんとダブルブッキングが起こります。ファンとの集い、的な夕食会とディナーパーティが同じ時間になっちゃってたのです。まあとりあえず深く考えずにジャンダビッドの後ろにフラフラついて行ったら、当然のごとく「ファンとの集い」会場へ。
これまた日本では聞いた事がないイベントなんだけど、熱心なファンの方々と一緒にいろんな話しながらの食事会なわけです。うちらのテーブルにも小さいお子さんからそのご両親、はては結構なご年配の方まで。基本トークはジャンダビッド任せでこっちはまたせこせこサインをかく事に。食事会といいつつ、飯食う暇ねっす(笑。
疲れたので一服、と中庭に出ると、中庭を挟んでDARGAUD社のディナーパーティ。
担当さんに見つかって、「実は日本から作家さんが来ている。挨拶しにきてくれ」と。
正直「今回ノミネートされた日本人の作家さんで是非会いたいって思う人石ノ森先生くらいなんだけどなー。」とか不謹慎な事考えながら、数人分のサインを残したまま、ディナーパーティの会場へ。

そこに。

いたよ!!!

みなもと太郎先生だよぉおおおぉお!?

「は?え?」とかなりながら瞬時にてんぱる。まさかそんな大先生とほぼさしで会食できるとは!
前の晩にこちらに着かれて、文化庁メディア芸術祭のながれで、こちらでスピーチをされる事になったのだそうで。
一度席をはずし、ファンの集いの方がたにまだかき切れていないサインをかきにもどったものの、合計したら一時間はみっちりお話してたのではないだろうか。
先生は実にいろんなジャンルに目を通されていて、モエからなにからほぼご存知で、世代の違いなんて気にならないくらいのびのびといろんなお話ができて、「ああ、やっぱりすげえなあ」と改めて自分のまだまだいたらないとこに気づかされました。
この件についてはもっと語りたいけど、ブログが終んなくなっちゃいそうだからとりあえず
ここで。お疲れで帰られた先生に、帰る前にサインもらっちゃったんだぜ!うへへ!

で、とりあえずファンの方々の集いにどもり、軽く会話したりで三々五々の雰囲気に。
「最後に一服」と中庭にでると、そこにホセルイスさん(過去、スピルーの漫画版をかいた際、本編のスピルーとファンタジオをかかれていた)とブルーノ(同年代くらいのマルセイユに住むデシネ作家さん。なぜだかわからないけどやたら気が合う(笑)が。ホセルイスさんもブルーノも言語の違いを飛び越えて気軽に話せる人なので、そこで近くのテーブルから皆イスだけ持ってきて車座になり、その場にいた他の作家さんたちと楽しい時間を過ごす。
そのとき隣に座っていたのが、やっぱり同じく少年少女向けにノミネートされた『L’île de Puki』のDANJOUさんとDJETさん。不思議な偶然で、この日実は同じホテルに泊まっていて、
朝1人であさめし食べてたらこの2人と会っていたのです。「あれ?今朝会いましたよね?」
「そうそう、朝同じホテルだったんだよ!」って感じで話が弾み、なんかしかも私の事を知ってたらしく、「あなたの作品のファンなんだ!」と言われてなんか嬉しくなる(笑。
DANJOUさんと話しているうちに、むこうはこちらにフランス語で話しかけ、こちらはソレに英語で応える、という不思議な会話に(笑(私は簡単なフランス語なら聞き取れるものの、とっさにしゃべる時フランス語がなかなかでてこない、ってレベルなので、自然にそうなった)。フランスにも日本にも、漫画界には似たような問題があるんだね、なんて話を。

それぞれ持っていたお酒がきれたので、さすがに解散。ブルーノに誘われて、ホセルイスさんとブルーノのマルセイユ友達とバーに行く事に。なったはいいものの。
中庭からホテルの出口に結構大きめのバーがありまして。いろんな会場でパーティが終った作家さんや業界関係者さん達がそこでみんなして二次会を。
「なんだこりゃ?」ってくらいの人数。懐かしい顔がたくさんいて、フランスに住んでいてもなかなか会えないような人達がそこら中に。「おひさしぶり!」の挨拶をしていると、隣でブルーノが「出られないんだ、このホテルは。このバーを越えるのが最大の難関なんだ」とつぶやく。ホントにその後、まだまだ知人は少ないものの、業界関係者の人たちに挨拶しまくったり、その場の流れで新しい人を紹介されたり、「ホントに出れねえ(笑」となっていると、やっぱり同じアトリエではたらくトマがビールをおごってくれた。そうなったらもう、ビール飲むまで出られないじゃん?

どんくらい挨拶地獄が過ぎたか。なんか分けわからなくなった頃に、ホセルイスさんの救出を諦め、やっとブルーノと2人でホテル脱出。「ホセルイスは…助けられなかった」とブルーノがつぶやいたのが印象に残っている(笑。

バーでやっと落ち着いて歓談し、気がついたらもう3時。翌日10時からサイン会ですよ?
へっとへとでホテルに戻ったのでした。

で、翌日。
朝からサイン会。会場がひらくまえに入場。フランス人が会場前に列つくってるよ!?デモ以外でフランス人が並ぶの見たのはじめてかもしれん。
みなもと太郎先生のスピーチを聞きに行きたかったけど、結局サイン会が時間いっぱいおわらず行けず仕舞い。残念。
サイン会はとどこおりなく終了。その後、またインタビュー。新聞と聞いてたけど、なんかビデオカメラ出てきた。映像でのインタビューはやたら緊張する。
普段聞き取れるレベルのフランス語も、英語すらもまったく出てこなくなる(笑。
失敗したなあ、もっといい事言えばよかった、と、軽く後悔。
インタビューの合間に「賞がとれなくても第一巻がノミネートされるのは凄くいい事なんだ。今後の注目度がぜんぜんちがうからね」なんてありがたい話をして頂く。

で、帰りの電車が来る前にちょっと外れた郊外で、子供を相手になにか催す、とだけきかされてアングレームの専用ハイヤー(!)にのって郊外のイベント会場へ。
「何するんだべ」と思っていると、車座になった数十人の子供達を前に、漫画教室みたいのが始まる。MCまでいる。「まずはオオシマに、子供でも簡単にかけそうなシンプルな絵のお手本をかいてもらおう。」「ジャンダビッド、日本語でボンクワージュはなんて言うんだい?」「ガンバレ、だ。」「よーし、じゃあみんなでオオシマに「ガンバレ」だ!」そんなノリで、数十人の子供達の日本語での「ガンバレ!!」の大合唱のなか、1人ホワイトボード的なものに絵を描かされる。殺す気か。カイジだったらぐにゃーってなってる。

なんとかそつなくこなし、「じゃあ最後に何か日本のキャラクターをかいてもらおう!何がいいかな?」で、子供達、「ナルト!!ナルトがいい!」
かいた事ねーよ!!
ご丁寧にもMCの人がどこからかナルトのお手本を持ってくる。いきなりぶっつけで初ナルト。こんなのアカギでもぐにゃーってなる。オレ、ヒロユキだぞ(笑。

かいてる間はやっぱりお話はジャンダビッドに丸投げ(笑。しらねーよナルト。
読んだ事も実はない。どうしよう。なにさ。なんなのさ。

そこでここ数日一番の奇跡。僥倖。なんかものすごくうまくナルト描けちゃった(笑。
子供達から大喝采。漫画教室が終ると、子供達がまわりに集まってきて、Tシャツにサインをせがまれたり、わざわざ持ってきてくれていた私らの本にさいんをせがまれたり。まわりを取り囲まれてのサインなんて初めてで、Tシャツにサインなんてのも初めてで、軽く芸能人気分。
帰りの電車の時間がせまってしまい、2、3人かけない子がでてしまった。一番の心残り。

そんな感じで帰宅したわけです。本祭は土日も行われるそうですが、さらに身動きとれないくらいの人出になるとか。
次があれば是非今度はフルで参加したいなー、と思えるくらい本当にいろいろな経験ができました。
本当に楽しかった。日本で漫画家を続けていても一生味わえない経験だったんじゃないだろうか。直接ファンの人達を自分の目で目の当たりにできるなんてまずサイン会くらいしかないだろうし、食事会や漫画教室など、サイン会以上の密度でファンの方々とふれあえる。
自分にはこんなにファンがいてくれたのか、と目頭があつくなったりしたこともしばしば。
びっくりするぐらいのエネルギーをもらえたのです。
なんども追いつめられたものの、ずっとニコニコしながらサインかいてたんじゃないかな。

アングレーム、とにかくヘトヘトになったもののすっごく楽しいお祭りだったのです。

追伸。
あのスケジュールと人ごみででエンキビラル探すのとかムリでした。ムリ。絶対ムリ。
ピンポイントで一般参加しないとムリだと思われます(笑。

というわけで、なっげえ日記になった、「アングレームの実態、その光と闇」の回を終らせて頂きます。

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コメント

ぱくりだって、声大にして叫ぶ人はそりゃおちますよね

すみません、訂正します
マングローブ→アングレーム

初めまして、「風雲児たち長屋」管理人の渡辺活火山と申します。
昨日(4月7日)、「みなもと太郎と語る会」が開かれ、アングローブ話の中でオオシマ様の事が出ました。
先生は「私を誰も知らない場所で、敬意をもって接して下さった」と非常に感謝されておられました。
私たちもみなもと先生からオオシマ様のお話が聞けて、楽しい時間を過ごすことが出来ました。
心よりお礼申し上げます。m(_ _)m

って、タイトルに反しておめでとう!っていうのも変やったねw
ノミネート&中長期的な意味でおめでとう!ってことで一つ。

本当に良かった!&お疲れ様!
一言で申し訳ないが、心からそう思う。

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